初日8日(月)、午後1時半を過ぎる頃から、全体会の会場となるユネスコ本部第2会議場前には続々と人が集い始めた。懐かしい顔、見覚えのある顔に混じって、まったく初めての出会いとなる顔も数多く見受けられた。
3日間の会期中、会場がすべてユネスコ本部となったことから、今回のフォーラムでは特に各国ユネスコ常駐代表部の大使やユネスコ本部職員の参加が目立った。多忙な職務のなかの合間を縫うようにして交代で参加する人もいて、とにかく当センターへの関心と期待を強く感じ、開催の理解を得ることすら困難であった最初の頃を思い起こせば、まさに隔世の感があった。始まりがなければ今≠ヘ決してないことに思いを致し、改めて積み重ねることの意味の大きさを感じた。
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午後2時、当センター生形泰子理事の開会の宣言をうけて、初日全体会の議長を務められる(社)日本ユネスコ協会連盟理事長・文京学院大学副学長の野口昇氏が登壇され開会式が始まった。 |
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開会の挨拶には、ユネスコ事務局長補・教育局局長チエン・タン氏、OECD教育局局長バーバラ・イッシンガー氏、ユネスコ日本政府代表・特命全権大使の木曽功氏が立たれ、それを承けて金子由美子理事長が主催者として挨拶を述べた。
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続いて、ユネスコ事務局長のイリーナ・ボコバ氏よりのビデオメッセージが会場に流された。
その後、第10回記念行事として『生涯教育国際フォーラムの足跡』のDVDが上映された。創設者 野村佳子初代理事長が、初めての世界旅行の途次に出会ったアポロ11号から送られた地球の客観像から「地球運命共同体」を実感し、そこから「あたかもコップの水が溢れるように自然にグローバルな活動が展開していった」と語るインタビューシーンに始まり、過去9回のフォーラムから今回に至る歴史をたどった作品に、会場からは大きな拍手が起こった。
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その余韻の残るなか、当初は元ロンドン大学教育研究所学長デニス・ロートン教授のプレゼンテーションが行われるはずであった。ところが、直前になって同教授の奥様が体調を崩され緊急に手術を受けられることとなり、ご欠席のやむなきに至った旨が議長の野口氏より告げられ、氏によって同教授の「生涯統合教育に関して創設者野村佳子先生と語り合った問題点について」の原稿が読み上げられた。
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休憩を挟み、午後3時40分から、いよいよ金子由美子理事長による基調講演「未来創造学としての生涯教育─21世紀の人間復活─」が始まった。
金子理事長は最初に、今回この第10回を記念する国際フォーラムが迎えられたことの意義の大きさについて語り、創設者がこの活動を始められたことへの深い感謝を表すことから講演に入った。
創設者が生きた20世紀という時代についてふれ、野村生涯教育が生み出された時代背景を語った上で理事長は、教育の本来の目的である人間とは何か、その本質、さらにその開発を阻むものについて詳細に語った。
そして野村生涯教育の教育原理について述べた後、今、人類が越えなければならない課題について語り、そのためには未来を創造する「人間づくり」が不可欠であることを訴えた。
最後に、創設者が心を痛めた1960年代の青少年の一人であった自身が、この教育論の学習と実践によって人間としての尊厳を取り戻し、21世紀を生きる人間として人間復活してきていることを大きな実証としてテーマについて語り、創設者への深い畏敬と感謝をもって講演を終えた。会場から巻き起こった称賛の拍手は、しばらくの間鳴りやまなかった。
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